ITによる生産性向上の異論と、もう1つの要素

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90年代の半ば頃から、よく報道やコンピュータベンダーなどの講演会などを主体として言われていたことで、現在でもそうなのですが、

「アメリカの企業や国内での先進企業は、積極的にIT(情報技術)を活用したことから、生産性が格段に向上して、業績を大きく伸ばした。それに対して、バブル経済の痛手を受けた金融業界などは、システム投資を行えなくなったことから、企業競争力に差がついてしまった。」

「また、日米の生産性向上の格差は、90年代日本は先進国の中で最も伸びが少なく、国際競争力に少なからず影響したのも、ITの活用に積極的でなかったためだ。」

といったように言われています。当社でも当時は報道や統計などでこうした内容を度々見ましたものから、当時の厳しい予算の中でやりくりをつけながら、トップダウンで情報化を進めてましたが、最近になってからは、「当時喧伝された、ITによる生産性革命には疑問がある」といった論調が出始めてておりますことから、大いに驚いております。
いったいどういうことなのでしょうか?


回答


端的に申しますと、90年代に起こりました生産性の向上は、コンピュータのダウンサイジング(汎用機やオフコンなどのシステムから、クライアントサーバシステムに変わったことなど)に始まり、パソコンやインターネットの普及などといった、IT
関連商品の生産や販売の急増に過ぎず、必ずしも実体経済を反映したわけではない、という見方です。
そのためITによる技術の革新が、必ずしも労働生産性を飛躍的に高めたわけではない、という見方が出始めるようになりましたが、その最大の契機はアメリカの当局が評価をにわかに変えてきており、その大きな要素として、現在におけるアメリカでの労働生産性の伸びの低下による、懸念が挙げられます。

生産性の上昇とITの投資や普及と全く関係がない、というのは、当時を知るものとして大変ショックな面もあるのですが、根拠としましてはアメリカの労働生産性は、特に景気の良かった2000年頃から、2002年にかけて高まりましたが、生産設備の稼働率の指標が雇用に先んじて上がりましたことから、計算上の生産性が大きく跳ね上がりました。

加えて雇用は、アメリカ国内ではなく、中国やインドなどといった人件費の安い国外(特にアジア)が中心でしたことから、ITによる技術革新だったと過信されていた、というのが大きな要因と言えるでしょう。


こうした説が仮に本当だとしますと、当時はなぜ、多くの人たちが錯覚をしたり過大評価をしたりしていったか、その理由につきましては一面ではIT化によって、コンピュータのコストを大幅に引き下げたり、インターネットなどを中心にして、通信コストが大幅に低下しましたことから、一定の生産性の向上があったのは確かです。
その一方で昭和30年代の日本の高度成長の時代にありましたように、ある商品やサービスが本格的に市場に普及する際に、高い設備投資と商品の生産・それに加えて販売が飛躍的に増えて、また生産していく、といったサイクルが働き、生産性が上昇する仕組みが、技術革新やエネルギー革命の時に働きやすい傾向があります。

他にもこうしたサイクルは、19世紀の産業革命の時などと含めて、ありましたことから、IT技術の普及は、大きなステップの1つになったものと言えるでしょう。


日本では特に欧米と比較して、ITを活用した生産性向上の度合いが低い、といわれてきました。特に日本では、パッケージソフトよりもオーダーメイドのシステム開発が好まれるために、投資額が膨れ上がる割には効果が薄かったり、業務をあるべき形に最適化してからシステム化するのではなく、個人や部門のやり方をそのままにシステム化していったことから、効果が薄いと言われてきました。こうしたことも当てはまる面もあるでしょう。

アメリカの90年代の景気回復は、ITによる技術革新による生産性の大幅な向上が要因として挙げられましたが、要因の1つといったほうが良いのかもしれません。
当時の生産性向上の日米比較についてですが、海外のほうがパッケージソフトによる導入が多く、国内では昨今ではパッケージによるカスタマイズが増えてきましたが、往時は未だオーダーメイドによる情報システムの多いことから、投資額に比して効果が低い、期待値ほどではない、という見方も成り立っていたように思います。

他に効果の差異については、企業における労働力の構成要員によるところも大きいと思います。海外では直ぐに人員削減などを行い、業績が比較的速やかに回復する傾向がありますが、当時の日本では若年層の採用を絞り込み、中高年の社員はそのまま社内に残して自然減を促す要素が強かったことから、こうした労働構成なども、個人や部門のやり方をそのままシステム化していく、といったものと関係していたものと考えられます。

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このページは、Takayoshi.Ishikawaが2011年4月29日 16:11に書いたブログ記事です。

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