さらに拡大している企業のリスク情報開示

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かつてこちらのコラムで、「経営リスク情報の開示と、自社のリスク対策」という記事を読んだ記憶がありますが、その後は上場企業などでは業績に影響を及ぼすおそれの強い、リスク 情報の開示が、より進んだのでしょうか?


回答


今年はニッポン放送の買収騒動が起こってから、株主総会の時期には、ポイズンピル条項(毒薬条項)を定款に織り込む議決が多発したり、企業買収に対する防衛などにシビアになった時期と言えるでしょう。

本来は、一連のリスク情報の開示についても、低金利などから個人投資家が増加していることに対して保護する目的や、経営実態をより把握しやすくすることが挙げられますが、最大の意図としては、有価証券報告書などで、虚偽記載や重要な事実が記載されなかった場合、一定の損害賠償請求ができるようになったことから、訴訟を未然防ぐために、こうした一連のリスク情報の開示が、本格的に進むようになりました。

こうしたリスク情報の内容については、今までの傾向と比べて本来の事業リスクというよりは、個人情報保護法の施行に伴う、情報漏えいのリスク開示や、自然災害や気象などの記載が大幅に増えていうことが特徴として挙げられ、それに付随して特定顧客へ依存する比率が高いことや会計制度のリスクなどを織り込んでいる事例が挙げられます。

(1)個人情報流出のリスク要因
顧客の個人情報やクレジットカードの会員情報が、関係者や業務委託先などを通じて、外部に漏えいしたり、データの置き忘れの他にも不正アクセスによって入手され、信頼性が低下し業績に悪影響を及ぼすことが挙げられます。

(2)自然災害などのリスク要因
都内でも先日大きな地震がありましたが、相次ぐ地震や天災などのリスクが挙げられます。例えば神奈川や静岡に路線の多い鉄道会社の場合ですと、東海地震への影響がありますし、天災による消費へのダメージや、菓子メーカーなどでは冷夏の場合に売れ行きに影響を及ぼすことなどが懸念されます。

(3)カントリーリスク
最近では反日運動や人民元の引き上げがありましたが、カントリーリスクを挙げる企業も出てきました。例えば食品メーカーでは中国からの輸入が多いですが、経済情勢などよっては業績に影響されることが懸念されます。

(4)リストラの実施
経営再建を行っている場合にも、リスク情報を開示している場合が見られます。例えば三菱自動車では、仮にグループの支援が打ち切られた場合に、再建計画の実施に困難を来たすことが記載されています。

(5)新規事業及び大型投資
例えばソフトバングのように、総務省から携帯電話への参入に際して、スムースに行かない現象が起こっていますが、免許を取ったり需要の動向などから期待通りに展開されない、といった案件リスクを挙げている場合も見られます。

(6)会計制度
例えば減損会計の制度が導入されてから、今まで所有している資産の状況などが未だに確定していないこととの他にも、欠損金の繰り入れなどが税務当局に認められず、修正申告に応じたりするなど、会計制度関連の要素も、決して少なくありません。

ただ、こうした自然災害や個人情報の流出・加えてカントリーリスクなどは、会社を営んでいれば、ある意味当たり前に起こりうるものであり、情報の漏えいはともかく、天災などの自然条件やカントリーリスクは常に起こりうるものですので、一般的には「当たり前」と言ってもよいでしょう。
ただ現実的な問題として、リスクが現実のものとなって、株価が大きく低下し、投資家が損害を被った場合に、株主代表訴訟などの訴えを起こされる可能性がありますことから、未然に防止する意味もあって、あらかじめ「当たり前」と思われる項目でも掲載されるようになっているようです。

本来ですと、「こうしたリスクがある・ない」といった観点よりは、「様々に想定される事業リスクに対して、いかにコントロールしていくか。」といった観点で見て行く必要がありますし、またそうしたリスクヘッジのためのマネジメントの手法が、大きく問われるでしょう。

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このページは、Takayoshi.Ishikawaが2011年4月29日 15:55に書いたブログ記事です。

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