製造拠点や工場などの国内回帰について

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今年になってから、急激に工場などの生産拠点を国内に新たに増やす・回帰する、といった傾向が顕著になっています。90年代の半ばには、1ドル80円の時代になりましたことから、国内で生産していては、コスト高で成り立っていかないとまで言われていましたが、当時はコスト削減に躍起になっていた頃を思いますと隔世の感を受けます。果たして本当なのでしょうか?
また、特定の業種業態などに限られているのではないでしょうか?


回答


昨今では製造業の企業で、新規の工場など生産設備の建設を決定もしくは検討している企業がおよそ6割に達し、また既にある工場で国内生産分を増産する企業も多いことが、大きな特徴として挙げられます。

業種は基幹産業の自動車や電機業界に限らず、機械や鉄鋼業など幅広い業界に及び、その狙いと致しましては、以下のものが挙げられます。

1)海外生産分を国内にシフトする
携帯電話や消費者向けのデジタル家電など、高い利益の見込めますものは、モデルチェンジのサイクルが数ヶ月と極めて短いことから、受発注の基幹を極力短くして短期間に対応できる生産体制にしないと、在庫による損失が増えてしまうことから、市場ニーズによる面も大きいものと思います。

2)戦略的な要因
企業にとって、他社との競争優位を保つために社内にノウハウを獲得・蓄積していくためには、人材の流動化の激しい海外よりも国内のほうが、技術やノウハウを蓄積するのに望ましい環境にあると言えるでしょう。
特に自動車メーカーにとっては、加工のしやすいようにボディの鋼板作りが欠かせませんが、後でプレス加工しやすいよう、鉄を生産してから下がる温度を計算して、納入する時間を指定するなど、細かな管理の必要な場合には、国内のほうが望ましい環境にあるものと考えます。

生産拠点が国内に回帰し始めている理由や背景は、具体的には以下のようにいくつかの背景があるものと考えられます。

1)国内生産拠点の位置づけを見直し
90年代の円高の時には、始めにコストダウンありきで海外に移転するケースがほとんどでしたが、それから時間を経て最先端の技術やデジタル家電のように市場の関心の移り変わりの激しい製品は、国内で生産し輸出もするスタンスで、それ以外は海外の工場を主軸とする、といった戦略的な見地によるものが大きくなってきました。

2)国内生産によるコスト低下
90年代と事情が大きく異なり、年俸制度などの人事制度の導入によって、正社員を雇った場合でも、国内での人件費は前ほどは高くないことにも加えまして、派遣やアルバイトといった非正規雇用の増加も、コスト削減として大きく、以前ほどコストが高くない、といったことも大きな要因として挙げられます。

3)長期的なコストの検証
90年代の円高により、海外の工場を移してから概ね10年程度経ちます。実際に損益として分析してみますと、結果を分析してみると、仮に10年居たとしましても、品質の問題や定着率などから、実際にはそのうち3年くらいしか、コスト面で享受していない、といった動向が目立つようになってきました。


また新卒採用が活発なようですが、間もなくやって来る「2007年問題」で50代のベテランが退職してしまうことを機に、国内にいる人材を育成していく、といった狙いも大きな問題としてあるでしょう。ただし正社員を数多く抱え込んでしまいますと不況時や在庫調整の際に固定費が大きく膨れ上がり、身動きが取れなくなってしまうことを懸念してか、より調整のしやすい派遣社員やアルバイトなどで戦力を確保する方針が、景況が良くなっても傾向が強いことが挙げられます。
そのため、2007年問題で補充できる人員は限られながらも、なおかつコストはあまりかけられない、といった難しい経営環境が見えて来るものといえるでしょう。

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このページは、Takayoshi.Ishikawaが2011年4月29日 16:15に書いたブログ記事です。

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